北浦発たなご通信7〔あすか釣狂人〕

茜いろに染まった北浦湖岸を物思いにふけながら逍遥するひとりの男・・・目鼻立ちがは
っきりとした彫りの深い顔に日焼けした肌が風をひときわ爽やかなものにした。男のスラ
リと伸びた長い足が草の生い茂る土手の角で歩みを止まると、その機会を待っていたかの
ように虫の音が彼岸の風にのって聞こえてくる。若い日のデカプリオを彷彿とさせる男の
名は若○隆○・・・

北浦で釣具SHOPを営んでいる。「ふざけんじゃない!お前のどこがデカプリオなんだ・・・
鏡を見たことがあるのか」

ごめん!本当にごめんなさい。夏の疲れとストレスとで最近すこし変なんです・・・もと
もと誇大妄想癖はあったのですが、毎年この時期になると症状が悪化、どれほど友人知人
に迷惑をかけたことか・・・・これから真人間になりますンでなにとぞご勘弁を。

 定刻のpm5:00に店を閉め愛車の50CCで北浦湖岸をさっそうとカットばす・・・・
嗅覚を刺激していたアオコの不快臭もいつしかなくなり北浦の恵みが五感の隅々まで染み
渡っていくのが何とも心地よい。

そんな素敵なRUNを楽しんでいると、イイ雰囲気を漂わせた若いタナゴ師に出くわすこと
がある・・・・風景の一部に見事なまで溶け込んだ彼らは、伸びた草むらなかに肩からう
えをわずかに覗かせているだけ。愛車を止めエンジンを切って土手の上から邪魔しないよ
うに見させてもらう・・・椅子に座らずにマットを敷き胡坐をかいて釣っているようだ・・・
「むム、できる!」、竿さばきも手返しも相当なもの。あわせも静かで取り込むまでのゆ
ったりとしたリズムが美しい。なんだか無性に嬉しくなり心が弾む・・・声をかけたいの
を我慢して邪魔にならないようにと腰を上げた途端、体重オーバーが原因のヨロメキ・・・
「ガサッ」という音に若いタナゴ師たちがいっせいにこちらを振り返る。

「ごめんなさい・・・邪魔をしてしまって」本人は歳のせいだと考えていないし、まして
や体重オ
--などとは微塵も考えていないから始末が悪い。
やや間があいて彼らに「大丈夫ですか?」ナンテ声でもかけられようものなら、まいった!
・・・「ごめんなさい、邪魔をしてしまって」といってスゴスゴ

と顔を隠して退散するより術はない。 
 そんな、できる(?)若いたなご師たちから寄せられる質問に、「イイ調子の和竿って、ど
ういうのですか」というのが多い。

もちろん、「イイ調子の和竿」なんてものは所詮、個人の「このみ」で大きく左右される
ものだから決まった定義なんてあろう筈もないが、かといって軽々しく和竿の優劣を論じ
たら竿師が丹精こめて作った竿が可哀相な気がしてならない。

そこで、わたしが竿を選ぶ基準にしている事を箇条書きすると・・・・、
 ・穂先から序所に手元にくるにしたがって、張りが強くなるもの。(穂持ち、穂持ち下の
  調子が大切
)

  ・竿をつないでみて、きしみがしないもの。
   竿のある部分だけに、硬さを感じないもの。
   節の形状がきれいで、整っているもの。
 ・穂先だけが極端に軟らかくないもの。

さらに、個人的好みを付け加えると・・・・・、

 ・塗りなどが派手すぎず、使い込んで味がでる落ち着きのあるもの。
  胴漆の色が濃くなく竹本来の風合いが殺されていないもの。
  節を削りすぎていなく、竹本来の素性と美しさが損なわれていないもの。
  ちいさなタナゴの引きを感じつつも、バレにくいだけの粘りがあるもの。(これは、実
  際に使ってみないと分からないことが多い)

  このような竿に出会ったら、永く貴方の傍にある愛竿になること請け合いです。さらに、
  つけくわえるなら、釣る人の技量と品格が和竿の持ち味を存分に発揮させ、扱いと手入れ
  が和竿を出世させてくれると信じています。

  たなご釣りは所詮、へそ曲がりが粋の世界であそぶシャレの釣り・・・他人に惑わされる
  ことなく吾が釣道を進もうじゃありませんか。

2005,9,30  あすか釣狂人 

江戸釣趣 あすか 亭主

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