北浦発たなご通信5〔あすか釣狂人〕

すっかり永くなった日が筑波の彼方に傾きかけるころ、仕事を終えて北浦湖岸を自転車

であてどなくポタリングする・・・・遠景を愛でスローな一時を満喫しながら明日の英

気を養えばいいものを、釣り師の性といおうか貧しき小市民の悲しさとでも言うべきか

、つい水面を見てしまう。

「おっ!こんな場所でイブニングリングが」

見れば、おびただしい数の小さな波紋が水面に広がっている。

そう、それがタナゴが群れている場所で日没問近になると見られるイブニングリングな

のです・・・フライフィッシィングの世界では夕方に羽化する水生昆虫などをねらって

トラウト類の魚などが水面で補食する行をイブニングライズというのですが、その時に

できる波紋をスケールダウンし、もっと波紋のできる密度を濃くしたのがタナゴのイブ

ニングリングだと思ってくださればイメージできると思います。

ヤマメなどは魚体を水面上までジャンプする光景などがよく見られますが、タナゴ類の

イブニングリングは全体に控え目で水面上に魚体の一部を見せるなどという派手なパフ

ォーマンスはあまりありませんが、そんな中でもタイリクバラタナゴは目立ちたがりな

性格があるようでトリッィキーな動きで私たちの目を楽しませてくれます。なお、タナ

ゴのイブニングリングという言葉は私の造語ですので一般的ではありませんのでお断り

しておきます。

このタナゴのイブニングリングがある場所は、タナゴが群れているという確実な証拠で

すので、翌日に竿を出す有力侯補になることはいうまでもありませんが、逆に眺めるだ

けにとどめタナゴの大らかささが醸し出す「いやし」を至福の時に代えるのも、また楽

しいことだろうと思ったりもしています。

西の空が茜いろに染まるころ、北浦はるかに筑波の双耳峰がくっきりと蒼いシルエット

で浮かび上がる・・・・早めに納竿した日など北浦左岸にどっかと腰を降ろし、こころ

静かに夕景を眺めるゆとりも一段高い釣りの境地だと思うのですが・・・・?

数の論理やサイズの論理などを超越した心境でタナゴと戯れることができるようになっ

たら、釣りを趣味とした喜びが無垢なものとなるかも知れません。

目の優しい若い釣り師がひとりでも多くなることは私の夢ですし、また、そのような釣

り師が主流を占めるようになったら喜んで穏やかな気持ちで竿を置き、若者たちの応援

団になりたいと思っています。

                          05,5,好日

  江戸釣趣 あすか 亭主

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